R6.5 深刻化するエッセンシャルワーカー不足

 先日利用したタクシードライバーの話です。「定年退職後、嘱託で働いているが、新人が入ってこないのでシフトが組めず、夜も運転しなければならない。」と嘆いていました。
 少子高齢化の影響で、タクシー業界だけでなく、バスやトラックなどの運輸業のほか、建設、医療、介護、ホテル、小売など、人手不足はあらゆる分野に及んでいます。企業の中には、経営は順調なのに人手不足から事業を諦めたり、店を閉めるところも出てきました。
 我国はこれまで、人手不足の問題を外国人労働者を受け入れることでカバーしようとしてきましが、近年では、文化や生活習慣が異なる外国人居住者が増えることで、地域でのトラブルも目立つようになっています。
 人手不足の解決手段として今注目されているのが、AIやロボットを活用した業務の自動化、省力化です。セルフレジはもう当たり前ですし、料理をタッチパネルで注文し、配膳はロボットが行う飲食店も増えてきました。
 地方においても人手不足は深刻です。日常生活を支えてきたエッセンシャルワーカーの保育士、介護士や看護師、さらにバス・タクシーやトラックなどのドライバー不足、そして、地域のエッセンシャルワーカーとも言える消防団員、民生委員や児童委員、地区役員のなり手不足もあり、地域の安全安心で豊かな暮らしが脅かされるかもしれないという懸念が生じてきています。
 人手不足に対し各業界では、介護ロボットや自動運転技術などの導入による省力化を試みていますが、まだまだ完全に人に代わるには至っていません。また、人と人との関わりで成り立っている子育てや介護サービスの提供は、やはり人手がなければ十分に対応できません。
 こうした地域での人手不足問題を解決していくためには、まずはエッセンシャルワーカーの待遇や職場環境を改善し、余裕と誇りを持って働けるようにすることが先決です。また、安心を維持するためには、有償ボランティア制度の導入を検討する時期にきもています。
 当然、こうした取り組みは一つの自治体でできるものではありませんので、国も経済分野での人手不足対策だけでなく、地域のエッセンシャルワーカー不足対策にも、本腰を入れるべきだと思っています。
 
柴田町長 滝口 茂